相談
実家の近くに親が中古住宅付きの畑(庭付き一戸建て)を購入して家庭菜園を楽しんでいます。その中古住宅は無住の築5-60年で現在は物置程度に使っています。両親にとっては将来帰ってきた子供の自宅用地にいいかも、との親心もあったようです。
とはいっても、高齢化・空き家化が進むオールドニュータウンです。実家も築50年余で、購入した中古住宅とともに、老朽化もあり、しかも耐震性や断熱性等も旧性能なので、自分と親の「今後に備えた安全・快適な住宅」としてはこのままでは心配です。自分の定年を見据えて、これらの課題を解決していきたいと思っています。
いろんな構想が頭をよぎります。
- 実家のリフォームや建替え・・・家庭菜園の用地が採れない
- 畑も楽しめるように新しく買った方の土地・家でのリフォームや建替え
その場合リフォームがいいか、いっそ新築を考えた方がいいのか? - いずれにせよ「使わない建物」を所有し続けるかどうかの問題あり
など思いつくのですが、実際にどうやって物事を進めていったらいいかわかりません。アドバイスお願いします。
答え
さらっと確認したところ、両方の土地は建ぺい率50%容積率80%の一種低層住宅専用地域にあるようです。比較的ゆったりした土地利用を推奨する「一低専」です。建築基準法上の接道条件もクリアしていて、再建築(増築や建替え)も叶います(詳しくは確認必要)。
「性能アップした家」をとお望みでしたら少しでも若い内=判断力が冴えているときに、いろんな「大きな決断」を速やかに、と計画されて下さい。手元資金の確認や不動産流通の動勢は少なくとも把握しましょう。
その上で、住み慣れたこの地のいずれかの家にターゲットを絞ったら、家族会議をして建築条件をできるだけはっきりさせてみてください。
■リフォームの場合
- 予算と住む期間・・・住みながら工事か工事中仮住まいか
- 望む性能・・・耐震、断熱、省エネ、バリアフリー等
- ハウスメーカーの選択、もしくは設計者+施工者の選択(グレード感の確認)
- 工事範囲(面積・エリア)
- 間取り(使い方の履歴も含めて)
- 外せないその他の条件(こだわりの設備や収入源となる仕事場等の確保)
概して、建築の確認申請等「許認可」が不要なリフォーム(増築しない)を心がけるといいと思います。耐震性アップには減築も効果的です。
■新築する場合
上記以外に
- 解体費用
- 新築ならではの税金や登記、許認可の手続き費用等
をご考慮されてください。
また残った片方の土地・家の使途・行方・・・売却、賃貸(リフォーム前・後)は資金にかかわる問題です。
リフォームか建替えか
通常、建物全域(外観、内観)に及び新築並の性能を求めるスケルトンリフォーム(構造体を残した全解体する改装)は、新築以上の工事費が見込まれます。
エリアを限ったパーシャルリフォーム(部分改装)で目標とする年限を暮らすことを想定すると、ある程度リフォームの方が有利(軽費)になります。
内装:2階はそのまま1階だけリフォーム、外装:雨漏りなどなければ補修程度とする・・・とかです。標準的な総床面積35-40坪の建物なら新築で坪100万前後が多く、パーシャルリフォームでは、水回り中心のプチリフォームで3-500万円、その他のリニューアル等なら1500-2000万が納得しやすい実勢費用と思われます。
が、昨今のウッドショック→円安による物価高騰や人手不足による人件費アップで、10年前の3-5割増しの工事費を念頭により具体的な構想(費用の把握と専門家とのやりとり)へ進んでみて下さい。
参考 事前の相談先について
- 税金は税理士
- 相続は弁護士
- 登記は司法書士
- 不動産全般は土地家屋調査士・不動産鑑定士(境界明示や売買、賃貸)
- 建築は建築士
その他
役所の相談窓口を頼るとさまざまな補助金などの情報も得られます。
ex.子育てエコホーム支援事業>>
川西市住宅耐震改修促進事業>>
耐震に関して注意が必要なこととして、ハウスメーカーの独自設計の建物の場合(○○ハウスとか)、構造計算は在来木造とは違うアプローチが必要になります。在来木造は一般の建築士が扱えます。
概々算を立てるためには、経験豊富な施工業者に最近の施工例から具体的にかかった工事費をリアルに教えてもらうこと(事例把握)、次に工事規模とグレード指示程度でおおまかな工事費を提示してもらうことが考えられます。建築士に相談する場合は、そうしたアドバイス全般や具体的な間取りや構想の実提案を依頼してから、具体的な設計に進むかどうか(設計契約)を決めたらいいでしょう。
「設計&施工」できる施工業者もありますので、施工者にヒアリングしてみて下さい。ただし社内設計者がいない場合、協力設計士(建築士)やインテリアプランナー・コーディネーター等が担当することになると思います。
中古住宅の性能チェック
非破壊調査による耐震診断(簡易診断や一般診断)で建物全般の状態をある程度把握できます。主に建物の概要や構造・構成がわかると同時にリスクになる劣化について調べます。できたら建設当初の図面(建築確認書類)や売買時の重要事項説明、過去のリフォーム時の図書や写真も役に立ちます。
リフォームのための破壊調査や流通に載せるための詳しい調査は別途行います。
住宅性能表示制度について(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)>>
能登半島地震を受けて、京大河田恵昭教授の言葉から
「地震のダメージの蓄積」の危険性について、
2024.1.08朝日新聞
「震度4以上の揺れを受げた木造住宅には、何らかのダメージが残っていると考えるべきです。特に築20年以上を経た家屋は、地震の揺れに対する抵抗力がかなり弱くなっています」
対策として、
「過去に大きな揺れや一部損壊につながる地震の揺れを受けた木造住宅には、耐震診断が必要です。それを促す仕組みを定着させるべきです。中古住宅の売買に際して過去の地震履歴に応じて耐震診断を義務づげるとか、耐震診断を受ければ保険の料率が低くなるとか、義務づけやインセンテイブを伴う施策が求められています」
地震等の災害リスク
ちなみに、地震等の災害リスクに関しては、下記コメントのとおりあきらかな大規模造成地(谷埋め型盛土)ですのでご注意下さい。リスクについては、直近の地震、例えば1995阪神淡路大震災や2018北大阪地震による近隣の被害が参考になります。
>>大規模盛土造成地マップについて(国交省)
>>重ねるハザードマップ(国交省・国土地理院)
ここは、洪水、内水、高潮、土砂災害、津波による被害の危険性が想定されている場所ではない、もしくは現時点で災害リスクに関するデータが未整備の場所です。
周りと比べて低い土地や崖のそばなど危険を感じる場合には、地方自治体からの避難情報などを参考に必要に応じて避難してください。
ハザードマップより
参考本の紹介です
住宅地盤がわかる本 安全な地盤の基礎・設計の考え方>>amazon
– 2014/10/18
藤井 衛 (著), 金 哲鎬 (著), 渡辺 佳勝 (著)
地盤の基礎、調査方法、補強方法等についての知識はこれで。入門書ですがとてもわかりやすいです。各種地図の見方、現地調査や文献調査の際に特に留意するべき点、軟弱地盤の見極め方、データの収集方法と読み取り方、調査結果の活用方法等、実際の作業の流れにそって地盤の安全についてのチェックポイントがわかります。
Amazon
絶対幸せになる!家づくりの基本125 2024年度版 >>amazon
– 2023/10/1
エクスナレッジ (編集)
テレワークや省エネなど住まいの最新事情を踏まえ、家づくりの流れやお金の基本、間取りの考え方など、「家づくり」において知っておきたいことを図解でわかりやすく解説。
さらに、耐震や省エネなど安心に暮らすためのポイントや蓄電池、IoTなど設備のトレンドも押さえているので、いまベストな家づくりができる内容が把握できます。
家づくりのプロが教える、125のキーワードです。以下目次より。ベストな依頼先
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