京都国立博物館 “堪庵”(たんあん)

021116京都国立博物館の堪庵 迎える秋

見学におすすめの茶室

「堪庵」は、京都国立博物館に入って、特別展示館*を左に見ながら東側に回り込んだ一角にある茶室です。

特別展示館は「旧帝国京都博物館」として明治28年に建設、レンガ造の近代建築としても有名。当時の宮内省内匠寮技師、片山東熊(かたやまとうくま)の設計。

堪庵本席は、「横3帖」と呼ばれる小間席で、「中柱付き、出炉、下座床」。珍しいことに、蹲踞(つくばい)は、囲われた土庇(壁で囲われた庇下の空間)の中にあります。この点は「金森宗和」好みと言われる大徳寺真珠庵の「庭玉軒」(重文)とよく似た造りとなっていて、とても興味深いプランです。

上田堪一朗

この「堪庵」はその名の由来である「上田堪一朗」(美術愛好家)から、昭和33年に寄贈されたもの。贅沢な敷地にゆったり建つ、京茶室の一例です。

博物館入口を入れば、使用中でない限り、いつでも見ることができます。あいにく室内に上ることはできませんが、建具の多い開放的な建物で、かつ、ちゃんと開けていただいているおかげで、隅々、ゆっくり観察することができます。

021116京都国立博物館の堪庵 下屋軒 掛込み天井

玄関土下屋天井は屋根なりでへぎ板張り。ぴりっとした丸太使いの数寄屋建築でありながら、茶を楽しむ草庵をらしく、野趣味ある材料を使っている。垂木は皮付きの雑木。小舞と押えに細い竹を使い、藤蔓で巻いてとめています。

京都国立博物館の堪庵 京都国立博物館の堪庵 玄関

玄関畳の間の竿縁天井は、葦をすだれ状に織り竿縁の上に乗せた天井。
竿、廻り縁は皮付きの雑木。

ときには茶会、句会、華道などの会に利用されているようで(有料)、今も現役の茶室建築でもあります。

路地も「序・破・急」ほどほどに、快く構成されています。伝い(通路・経路)は四角い延べ石でシャープにそして屈曲し、白砂や真黒の畳石(小石を敷き詰めたもの)で少ない緑を引き立てています。

京都国立博物館の堪庵 延べ石

京都東山を望むすばらしい立地で、きちっとした「数寄屋造り」の茶室を楽しめるとは「贅沢!」と言えるかもしれません。社寺・料亭に名茶席がたくさんある京都ですが、こんなにノビノビ拝見できる茶席は案外少ないので、数寄屋の勉強にとても適した茶席として見学おすすめです。