文化財の寄贈について

200823登録文化財桃林堂板倉家住宅-登録プレート「国民的財産」

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登録文化財の継承問題・・・生前の寄贈

相続人はいたが、屋敷そのものは継承させないと決め、恒久的に姿を残すため、また税対策もあり、自治体を含む公益団体に寄贈することで継承計画のスタート(すでに住まいとしては使っていなかった空き家だったが、最低限、維持管理はしていた国の登録文化財の場合)

1. セミナーハウスとして大学への寄贈案

興味を持つ近畿圏の大学があったが、NG。
例:地域活動拠点として古民家など借用や購入をしている例あり。吉本興業の「住みます芸人」のような。地域密着型地域活性化に貢献しようとするビジネススタイル。

2. 公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会(JNT)への寄贈案

相談時には、寄贈を受ける余力(人・金)無しとのことでNG。

例:ヴォーリズの設計の洋館駒井家住宅(京都市指定文化財)2002年寄贈、公開見学施設として同法人が管理・運営、ボランティアが支援>>

200823八尾市河内木綿の問屋 大和棟の茅葺き民家 登録文化財桃林堂板倉家住宅

3. 自治体へ寄贈案

当初、隣接する公共施設と連携して使える建物として寄贈を検討。自治体自らでは「運営できない」と判断しながら、国の某補助金を利用して改修し、ホテル業者と組んで指定管理者に委託し「文化財の宿泊施設」にする手法で寄贈を受ける準備。さらに当家は維持管理費用として収益を出している不動産を持参金として寄贈付与するまで案を出した。・・・結果国の補助対象要件に適応しないとの行政側の初歩的ミスが判明し補助金はとれず、ホテル化計画ももちろんNG、寄贈NG。

一般的に少子化で自治体は「公共施設は縮小」の方向。昔は地元名士の関係の土地・建物を寄贈や購入で資料館等に活用する例は多々あった(多くは持参金付き)。

寄贈例:旧平安家住宅(国の登録文化財、県景観指定)・・・川西市郷土館として1988年開館、市が「指定管理団体」に委託して管理・運営。修理は市等が費用負担。>>

購入例Ⅰ:住吉山手旧乾邸・・・長年の市民運動の末、相続税代わりに物納されていた洋館と敷地1000坪余を市が購入(2009年、10億とか)、時折公開する見学施設として市が修理し管理、ただ「第一種低層住居専用地域」なので、飲食・店舗・宿泊などに活用できないため塩漬け保存で維持費だけが発生中。市は購入の際、財政支出の理由に、予め市の指定文化財に指定した。寄贈を受ける理由付けに文化財的価値を示す「市町村の指定文化財に指定」するケースは多い。逆に言うと登録文化財クラスはこの手法で「指定で寄贈」が可能。>>

購入例Ⅱ:奈良県某市の歴史的建造物、土地は市が購入、江戸時代の老朽化した建物は市に寄贈(不動産評価は低い)。耐震補強などを施し見学施設や貸し館事業に使えるように改修して、常時公開の見学施設に。市は財政支出の理由に、予め市の指定文化財に指定する常套手段を使った。(改修費は工事面積70坪で、約8000万円)

200823八尾市河内木綿の問屋 大和棟の茅葺き民家 登録文化財桃林堂板倉家住宅

死後の寄附(納税期限まで)でも、間に合う「寄贈」

死後、相続放棄(全財産の相続を放棄すること)をして、国に渡す方法はあるが、継承される保証はない。つまり土地値で競売にかかる可能性も高い。

次に、相続財産の寄贈はどうか?

No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき(国税庁)>>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4141.htm
相続した財産を、相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例。

ただし相続人全員の同意が必要です。

寄贈断られた例
兵庫県某市に死後の相続財産(土地・建物)の寄贈を打診したところ、寄贈を受けると現在市に入っている固定資産税がゼロになるので、急な予算措置がとれないとの理由で「寄贈は受けられない」と。大規模な土地だったので固定資産税も大きかったのでこうした市の返答となったのかも知れません。土地は利用の方法によって活用価値が様々だが、たとえ歴史的建造物(登録文化財)であれ、建物の維持活用には多額の費用がかかる上、市民が納得する活用のためにはノウハウがいる。簡単にありがとう、って受け取るケースはまれである。

相続財産の寄贈は、死後10ヶ月がタイムリミットなので、少なくとも事前に相談をしておかないと簡単ではない。少なくとも府県はむずかしく、市町村との交渉となることが多い。

遺贈寄付を考える

遺贈寄付とは、死後自分の財産を社会や人のために役立てこの世に残せる方法のひとつ。相続財産からの寄付と、信託による寄付がある。

ただし、NPO法人などに譲りたい財産が不動産(家や土地)の場合は、できれば現金化したうえで遺贈したほうがよいとされるので、登録文化財などの建造物ではなかなかのハードルの高さである。寄付時の評価額が取得したときよりも値上がりしていると、特定の財産を指定した人などに遺贈する「特定遺贈」の場合、寄付者の相続人に所得税が課せられる可能性があり(みなし譲渡所得課税)、結果的にそれと特定しなかった財産から家や土地を遺贈する「包括遺贈」の場合は、相続人ではなく、遺贈を受けた「受遺者」が納税することとなるらしい。

遺贈寄付 最期のお金の活かし方

– 2018 星野 哲 (著)

第1章 6つの事例でみる遺贈寄付の形
第2章 ストーリーでみる 遺贈寄付を決めるまで
第3章 遺贈寄付をするための、相続&遺言の基本
第4章 相続税の控除&信託で、遺贈寄付をもっと活用する

https://www.amazon.co.jp/%E5%AF%84%E4%BB%98%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%88%E3%81%86%E3%80%81%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%89%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%9C%AC-%E6%B8%8B%E6%BE%A4-%E5%81%A5/dp/4532357985?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=16RXJ5QNY1IEB&dib=eyJ2IjoiMSJ9.vdmhn-dpaZzsozJgmYtd9ZezBCP6T2zyL11iZS9Vbgw10oaeFAiu-fKpjfOPcz-qvwW4U1XZWugQ1wx4PkYIHGySgh44BfkwWsieQXsaNoNzAqfoVv-M27MIqxAaUERv2oGaG_stSvdyZhHdvpGstdCCp8BumOZN24Acj_wskgcBqvYgyzRjW6nlXKEKmf4vDgy-sGyXX2UuINVJ869sZczDWnWlRpwMfiAh5XaYRESwAMF0y0ozdznJdz4_1VHmWVUETs1kxZfKxodxD5nkgcaMePTvVA3bQu5wYEkgSmw.Di9GAl8GjA4_CzHciORbZeeIcNDt-Zu-h-OxZQhaO8U&dib_tag=se&keywords=%E5%AF%84%E4%BB%98%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%88%E3%81%86%E3%80%81%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%89%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%9C%AC&qid=1711718749&sprefix=%E5%AF%84%E4%BB%98%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%88%E3%81%86+%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%89%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%9C%AC%2Caps%2C190&sr=8-1&linkCode=ll1&tag=kazabito-22&linkId=9540eaa562801c0f1a99c92f4b85bc36&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl

寄付をしてみよう、と思ったら読む本

(日本経済新聞出版) 2018
渋澤健 (著)、鵜尾雅隆 (著)

寄付には、人と人をつなぐ力がある。誰ひとり取り残されない世界の実現のためには、寄付は欠かせない。日本ファンドレイジング協会を立ち上げた、日本における寄付ムーブメントの旗振り役と、「寄付もまた本業の1つ」と語る、コモンズ投信会長による、はじめての寄付の本。渋沢栄一は、著者の祖父の祖父。

「みなし譲渡」に注意

たとえば古民家や歴史的建造物である「家と土地」を大学や公益法人、NPO法人などに寄贈する場合、不動産取得費*1千万円、時価1億円相当の家なら、その差益(=キャピタル・ゲイン)9000万円に対して、「みなし譲渡」税として寄贈者(や遺贈の場合は相続人)に所得税が課税されます。

税率が40%であれば、3600万円の納税が必要となるということ。

*売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなどのため取得費が分からない場合には、売った金額の5%相当額を取得費とする。>>国税庁

こうした場合には「所得税」を免除をしてもらうように、寄付を受けた法人*から国税庁に申請をします。2018年の税制改正後は、認可されるまでにかかっていた2~3年が1カ月以内に短縮されたことは朗報です。(*2019年時点では大学法人、公益法人、社会福祉法人などに限定)

写真の説明:桃林堂板倉家住宅

八尾街道界隈の便利で閑静な住宅街に突然あらわれる築200年の高塀民家が、店舗として活躍している例。(大阪府八尾市東本町)

18世紀前期、木造平屋建、茅葺一部瓦葺、建築面積158㎡の八尾市内で最も古い民家の一つで、代々「河内木綿」の問屋を営んだ旧家に、大正期現家がこの屋敷に移住したという。

間口9間半、奥行4間の大型の民家。平面は右手5間分が土間で、居室部は整形4間取であったものを土間境の広縁を居室に改造している。外観は、大阪や奈良にかつて分布していた切妻茅葺屋根の高塀造≒大和棟【やまとむね】の民家の好例。八尾街道と立石越・おうと越の分かれ道となる道標が脇に立っている。

江戸時代の町家景観を残す貴重な建物で「再現することが容易でないもの」として平成11年6月7日登録され、喫茶和菓子舗として現役で使われている。

家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決

– 2022/10/19
石川 秀樹 (著)

>>登録文化財と活用 サイトマップ