建築と都市の保存再生デザイン-近代文化遺産の豊かな継承のために
田原 幸夫 (著), 笠原 一人 (著), 中山 利恵 (著), 石田 潤一郎 (著), 北河 大次郎 (著), 清水 重敦 (著), 冨永 善啓 (著), 中川 理 (著), 田原幸夫 (編集), 笠原一人 (編集)- 2019/3/19
帯には「何を変え、何を守るのか」とあります。
近代建築を使いながら保存していくために、文化遺産としての価値を守りつつ、現代に適した性能をいかに付加するか。
近代建築に一家言ある京都工業繊維大学の研究者を中心に、文化財の構造解析界のオーソリティまでが文化財それも近代建築が持つ悩ましい問題を提起し、その解決を試みる。真面目すぎるようですが、こうした本が世に出ることは大事なことです。落ち着いた手触りのいい紙質の頁をいとおしくめくる楽しみがあります。紐栞がついています。
具体的には建築物である限りその適法性はいうまでもなく、建設当時には考えられなかった建築性能が要求される時代だからこその悩める文化財・建築関係者ががちで考えています。
それは試行錯誤の進行形です。
日進月歩のテクノロジーと社会全体のコンプライアンス意識といった絶対的背景も輻輳するなか、ある瞬間、「ひとつの答え」が必要になります。
活かすために諦めること、生き続けるために付け加えること、いまはあきらめるけど、次世代に望みを託して一歩引き下がること・・・・。
文化財現場、建築現場でおこなわれている一場面が見事に切り取られたほんといえましょう。
勉強になる一冊です。