つぶせない、もったいない昭和初期の屋敷
先祖から伝わったちょっと古めかしい町家です。心地よい賑わいのある界隈に、屋敷を囲む板塀や蔵、みずみずしい中庭を持つ、大好きな住まいです。
先の震災(’95阪神淡路大震災)に続き’18の大阪北部地震に見舞われ、地盤に不安あるこの地で老朽化した木造家屋は、なんとか持ちこたえてくれました。
屋敷にお礼の耐震補強
90年間の災禍をくぐり抜けた屋敷に、あと100年孫子に大事に住まってもらうためには、まずは安心できる耐震補強が必要と思います。
どこから手をつけたらいいでしょうか?
答え
元々良質な材料を選んで普請されていますので、しっかりしている印象ではありますが、昨今続く地震、そして近く襲う南海トラフ地震を考えると備えは十分とはいえません。
昭和初期ですと基礎と土台の関係など耐震への考えには、携わる大工によって大きな差がある時期です。ときは’23関東大震災を経て、警戒して作る大工と、「関西は大丈夫」と高をくくる大工がいたようです。奈良・京都の文化財修理のノウハウを持つ大工も加わり、もはや百人十色といえる関西の大工連です。
まずはそうした「地震への備え」の有無を建物から聞き取らねばなりません。地盤不良なら地下にどんな措置をしたのか、階高もゆったりした本二階ならではの揺れへの対策はどうか?木組みも調べましょう。
土葺きの非常に重い瓦屋根、重ね妻の入母屋普請でもあり、かつ二階壁と軒裏・妻壁には火に用心した漆喰塗り込めを施しています。火災には強いが、上部に重量がかさんでいるのは明らかで、地震力には不安定といえます。
差し鴨居の仕口にあいた隙間や隣接する付属屋との押し合いへし合いで接点には損傷もあり、地震に抗った痕が見受けられます。
まずは、全体を見通した耐震診断を行い、次にどんな暮らし方を継承なさりたいかお聞きしましょう。
良さは悪さ
現在のお住まいの好きな部分をなるべく残したいことと察しますが、ある意味、「良さ」は耐震上の「悪さ」となってしまいがちなのが難題です。
ひとつずつ課題解決しながら、じっくり詰めていけたらいいですね。