空き家の耐震改修

230807春日湯 空き家の耐震補強

相談

昭和30年代に建てられた中古住宅を土地とともに購入しました。駅近なのでリフォームして収益物件として再生させようと思っています。格安だったのですが、問題は再建不可能な土地であること。そうです、元々接道のない敷地に建っているからです。(建築基準法上合法な前面道路との接点がまったくない路地奥の土地)

人呼んで「違法建築」であるようです。(建築時に非合法に建てている)

とりあえず、自治体の無料耐震診断を申し込みましたが、今後耐震改修補助の利用を含め、どう対処しようかと悩んでいます。

密集市街地の中古住宅 違法建築 耐震

答え

某市の耐震促進事業では、建物を耐震改修するに当たって補助金を出すか否かは、その建物の合法性を条件にせず、その建物が地震によって人命を落とす原因にならない(倒壊しない)ことを優先し、つまり行政からいうと地域内の建物の耐震化率を上げるという目標のもと、その建物の違法性には目を瞑りましょう、ということのようです。

自治体の推進する木造住宅の耐震改修促進事業の中で、耐震診断、耐震補強設計(耐震改修計画策定)、耐震補強工事(耐震改修工事)への補助は、違法建築にも適用するということのようです。・・・実際に疑わしくてもそこを審査・検討・排除する手続きはない、ということ。

さて、違法建築も程度問題です。昨今の空き家特措法により、あきらかに周辺に迷惑をかけている、これからかけそうな空き家は所有者が安全対策をとる義務が発生し、所有者が撤去や修理を行えない場合、行政側で代執行する時代となりました。

まずは近隣にご迷惑をかけていないかを確認しましょう。

例えば、外壁がはがれて落ちそうだとか、屋根の鉄板がパタパタしていて、ちょっとした風で飛んでいきそうだとか、長年放置していたアンテナが倒れそうだとか、床下に猫が出入りしていて悪臭を放っているとか、樋が壊れていてお隣さんの敷地に雨水が落ちているとか、、、といったところです。特に密集市街地では、隣家が接近していてこうした「迷惑をかける恐れ」があります。

さて応急的に迷惑要素に対処するにつけ、迫る隣家で建物周囲に足場を建てる余地さえない場合が多いです。隣家とのお互い様関係が良好であるか、良好にした上で、足場を建てさせていただきましょう。

非合法な建物の余生としては、まずは周りに迷惑をかけず、次にその建物を利用する人に安全・快適を用意しなくてはなりません。

今回は耐震が入り口です。

密集市街地の中古住宅 違法建築 空き家特措法

縦割りの違法建築行政

日本の建築基準法は既存建築特に四号物といわれる小規模木造建築がほとんどの戸建て住宅の違法性には非常にゆるくなっています(民民間の民事訴訟になるケースは論外)。違法建築だからと住めなくなることや、ライフラインを止められることなく住み続けることができます(損壊などの危険性に対しては自己責任)。今回の耐震補強など住民の安全性につながる建築行為には片目つぶって(関わりたくないと言った方がいい)、別の法律である「耐震改修促進法」担当者が耐震化率をあげる目的の建築行為をむしろ進めてきます。そこで、補助金を使った空き家改修ビジネスとしては、近隣に迷惑掛けないようにしながら、既得権(居住権や私道など通路の利用権、ライフラインの既得権)を利用して、できたらひとつでも適法項目を増やしながら現在の建物のフレームを残した改修をされることをおすすめします。

セルフリノベーション

ビジネスとして、路地奥の未接道敷地の狭小住宅がどうよみがえるかは戦法次第といえます。安全快適な交通至便レトロな面持ちの狭小住宅として、セルフリノベーションを楽しむユーザーを探すのも一手でしょう。その際は耐震アドバイスをぜひ受けながらの改修とされてください。もちろん相談に載らせていただきますから。

経験からお役に立つことがあるかも知れません。
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空き家改修の教科書

古民家×DIYで自分らしい暮らしを実現! 2023/4/8
フクイ アサト (著, イラスト), NPO法人結びめ (編集)

空き家を自分で直して住みたい! でも何から始めればよい? という人に読んでほしいセルフリノベーションの入門書。空き家の見極め方、施工プロセスに応じた改修のポイントを豊富な写真とイラスト図解。体験した人たちならではの経験や知識を収録。道具や具体的な工程が役立ちます。