相談 既存不適格建築物
市街地で、戦前に建った「既存不適格建築物」住宅の間取り変更と耐震補強を希望しています。どのように進めればいいでしょうか?
答え
ご相談の「建築物」は、戦前に建てられた建物であるため、昭和25年にできた建築基準法をはじめ「現行法」上は合法でなくなってしまっています(T8市街地建築物法が先行した地域あり)。まず築年を示す建物の登記簿(手書き)などを確認しましょう。このページでは比較的小規模な※四号建築物を対象にしています。
四号建築物とは、特殊建築物を除いて、都市計画区域内などで、下記に該当する建物(建築基準法第6条第1項第四号)
1 .木造で2階建て以下で延面積500㎡以下で、かつ高さ13m以下・軒高9m以下のもの
2 .木造以外の平屋である場合、200㎡以下のもの
次に昭和25年以降の増築部分があれば増築時に建築確認を申請したか確認し、ない場合、増築時の法律により適法化が行われているかも確認する必要があります。
たとえば、増築時にすでに既存不適格部分の面積が容積率や建ぺい率をオーバーしている場合、たとえ1㎡の増築であれ建物全体が違法建築となってしまいます。
こうした増築時に適法化が行われていない、つまり違法建築として増築があれば、これからする増築や改修のためには、少なくとも所有者の責任において非合法部分を最初の既存不適格建築物オリジナルにまで戻すか、建物すべてにおいて適法化する必要があります。
つまりS25年以降の非合法な増築部分は撤去・除却(解体)しなければならなくなる場合があるということです。
(既存不適格部分が容積率や建ぺい率をオーバーしていない、また増築面積が確認申請が不要な面積までで、かつ合法的な増築がある場合は、確認申請が必要な増築面積に達するまでの増築が申請不要で行えます。→防火地域や準防火地域内の建物でなければ、増築面積の合計が10㎡が限界)
耐震リフォームに際しては、非合法な増築部分をないものとして改修計画を立てることとなります。もちろんさらなる増築は一切できません。が、減築はできますし、減築後において、結果的に容積率や建坪率をオーバーしていてもかまいません(既存不適格なまま)。また道路斜線や壁面後退においても現行法にそぐわなくても是正する必要がありません(既存不適格なまま)。
公的な補助対象となると判断された既存不適格建築物は、上記に気をつけて耐震リフォームをおこないます。
四号建築物の耐震リフォームつまり建基法上「大規模の修繕」、「大規模の模様替え」は原則、確認申請は不要です。(建物の軸=フレームを残せばすべてのことができます。基礎の補強や増設、柱や梁の取替え、内外装の全取替え、設備機器の更新、窓などの開口部の取替え、増減設が可能)
ここで注意が必要なことは、確認申請が不要ということで何をしてもいいのかというと、違います。確認申請という届出は不要ですが、建基法への適合は所有者としてまた関わる建築士や施工者として義務といえますので、不適合にならぬように建基法への適合条件をよく確認しましょう。
たとえ所有者でないとわからない部分、内装や間取りに関したリフォームであれ、リフォームにかかわるプロにとっては、「法の網の中」の建築行為と承知することが肝要です。もちろん所有者にそのことをわかってもらうことが、プロが仕事として関わる条件となることは明白です。
耐震計画がうまくいかないとき、参考になります。
これからも新工法は続々とでてきますので情報にアンテナはりましょう。
木造[耐震工法]パーフェクトガイド 改訂版 (エクスナレッジムック) ムック – 2014/6/18
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■もくじ
1 耐力壁・接合部
2 制振・シェルター・基礎
3 耐震診断プログラム