相談
登録文化財である寺の本堂の屋根の改修工事を住職から相談されました。現在本瓦葺きであるものを金属板葺きにしたいとのことでした。
弊社では、指定文化財の修理工事の経験もありますが、登録文化財の改修工事は初めてです。
登録文化財の屋根の葺替えやその他の改修工事にあたって、どのような点に気をつければよろしいでしょうか?
答え
まず私どもに相談する前に、登録文化財の手続きした書類(図面や書類)をご確認ください。登録文化財制度施行後もう10年も経ちますので、登録当時の記憶も薄れ、当事者らも代変わりしているケースがありますので、まずは登録の経緯をきちんと確認しましょう。
書類がみつからない場合は、市町村か都道府県の「文化財課」に書類の控えがありますので、所有者を通じてご確認ください。
その上で、所見にかかわった専門家に、建物にとって大事な部分、できれば改変しない方がいい部分、どの程度までの改変が可能か、などの相談にのってもらうことです。
もちろん地元の文化財課は、「登録文化財の保存・改修」の相談に乗る義務があり、アドバイスする責任がありますので、遠慮なさらず相談してみることをおすすめします。
もしまずは見てほしいという場合、私どもは、喜んで参上いたします。登録文化財の寺院に参拝できることはとてもありがたいことですから。
そうしたおりに、どうしたらいいかの初期相談にのることができますのでお呼びください。
がその後は、お寺さん=地域の宝のひとつですので、ぜひ、地元の方々の想いと職能(専門家や技術者)をうまく活用されることがいいのではないでしょうか。
瓦の葺き替えでは、古瓦をぜひ残してください。上の写真の鬼瓦に見るように「へら書き」には寺の歴史が見えます(年代や作者)。できたら再利用、つかわなくても必ず保存しましょう。また今時の瓦は性能や精度がいいので、すばらしく葺き上がりますが、味わいが失われることも多いです。一挙両得にはなりませんが、せめて特定の屋根面に古瓦の良品を残して安全に葺き(透水率を測り、釘穴を施し、空葺きにするのも一案です)、登録文化財としてのよさを損なわないようにしていただきたいものです。
ご注意していただきたいことは、改修の仕方を間違うと、登録文化財として登録原簿からの抹消を余儀なくされることがありますので、くれぐれも関係機関との意見調整怠りなく!、とお願いします。
お役立ち本の紹介
木造住宅の耐震診断と補強方法 (2分冊) 2012年改訂版 テキスト
– 2021/1/1
日本建築防災協会 (著)
著者名:日本建築防災協会,国土交通大臣指定耐震改修支援センター 出版社:日本建築防災協会
世界で一番やさしい木造耐震診断 最新改訂版
2021/10/24
保坂 貴司 (著)
切迫する巨大地震に対応するには既存建物の調査と適格な構造補強が欠かせない。
なかなか分かりにくい耐震診断を理解するのに最適の一冊!