2024.9.9令和6年度第1回まちづくり専門家会議>>
左:進藤家住宅(佐中千年家、県景観指定→市指定文化財) 右:川西市郷土館旧平安家
兵庫県景観形成重要建造物のメリット1
2021年度より、多年度にわたり棟ごと、箇所ごとに計画的に修繕していく場合に、あらかじめ計画の概要を説明すれば、「年度ごとに上限額をカウント」→毎年リセットすることに。各年度助成額の上限が330万円の場合、毎年330万円の補助がex.10年間可能ともとれます。
今年度から多年度にわたり棟ごと、箇所ごとに計画的に修繕していく場合に、あらかじめ計画の概要を説明いただいていれば(申請書に説明書を添付)、年度ごとに上限額をカウントする運用をしています。
兵庫県景観形成重要建造物のメリット2
兵庫県内の景観の形成に関する取り組のひとつ、「景観形成重要建造物」の指定を受けることで、基本設計費、実施設計および工事管理費として1/3または60万、景観を形づくる部分の改修工事費の1/3または270万円、門塀外観補修費の1/3または60万、樹木は診断・治療・移植として1/3または60万までの補助が出ます。
※市町随伴は不要
景観形成重要建造物等の修景助成の流れ
(修景:維持保全のための修理等の計画・設計、耐震補強も含めることが可能)
修景助成申請準備(市町→県民局・土木事務所)
↓←設計は同年度内なら事前着手可能
↓ (工事見積を出すため、設計はその年度分のみ)
↓←設計監理費と工事費をひとまとめに1年度1回申請が可能
↓←同じ建造物の修景工事を分割して複数年度に渡ることもOK
修景助成申請(写真や図面)
↓
工事の契約
↓
工事
↓←市町等による中間・完了検査もありえる(任意)
完了報告
↓
助成金請求・受取(振込)・・・330万を何年度でも継続して申請可能
西宮市・神戸市の景観指定について
西宮市「景観重要建造物」・「都市景観形成建築物等等」の場合、景観指定建物は工事内容によりますが、工事費の1/2かつ上限500万円で外壁改修費や樹木の剪定などの補助があります。市の景観指定と県の景観指定の両方を受けることも可能ですが補助が両方有効かは確認が必要です。111205
神戸市都市景観条例に基づく「景観形成重要建築物等」には、年間500万円の予算を持っており、外観補修の必要な各建物に振り分けて補助しています。補修計画を立て、時間に余裕を持って申請してください。150514
神戸市歴史的建築物の保全・活用に向けて>>
兵庫県景観形成重要建造物のメリット3
景観形成重要建造物等の保存活用支援・・・【3条適用】建築基準法を適用除外できる(2013年景観条例の改正)
景観形成重要建造物の保存活用にあたって現状変更等を行おうとする場合で、建築基準法に適合させることが著しく困難であるときに、その適用を除外するための「現状変更の規制及び保存のための措置」を講じる「認定景観形成重要建造物」制度を創設しました。
注)建築基準法の適用除外の可否は特定行政庁の判断になります。
2019.12.26景観審議会でのやりとり
(委員)
保存活用を図っていく中で、用途変更や改修をする際に建築基準法の接道等の制限があると思う、 その観点から保存につい てどのように考えるのか。
(事務局 )
県景観条例は、建築基準法第3条 第1項の「そ他条例」として位置付けがある。 条例では、「 認定景観形成重要建造物制度」を設けており 、建築基準法を適用除外とする仕組みがある。
民間の建物が適用除外を受けるには、課題が多いと考えるが、この制度を活用し、景観形成重要建造物である西脇市立小学校の改修を行った実績もある。
建築基準法においても、 確認申請が必要となる用途変更部分の延べ面積が 100 ㎡から 200 ㎡に緩和される改正が行われており、古い建物の活用保存を 緩和していく傾向にある。
兵庫県認定景観形成重要建造物への道
景観形成重要建造物の所有者は、まず「保存活用計画」を作成します。
その際、県の景観部局が景観条例に則して、特定行政庁が建築基準法に則して保存活用計画の事前相談にのってくれます。・・・ここが大事!でもまだ前例も少なく、支援体制が整っているとはいえません。
次に、建築所有者はできあがった「保存活用計画の認定」を知事に申請します。
これを県の景観部局が審査し、県景観審議会・市町村長への意見聴取を経て、認定されて初めて「認定景観形成重要建造物」になります。
所有者は、「現状変更の規制および保存のための措置」を条件に「現状変更」が許可制になり、同時に「保存義務」が発生します。
ここでやっかいなのが、「建基法適用除外の審査」です。
県景観指定では初めてのこの3条適用の建物が西脇小学校です。防火要件などを緩和できたそうです。
長大な三棟が渡り廊下で結ばれた木造二階建ての建物で、1937年(昭和12年)竣工、設計は内藤克雄。
建基法を除外してもその安全性や建物機能が担保されなければ適切に活用できませんので、特定行政庁の審査と「建築審査会の同意」と「適用除外の指定」が必要になります。原子力安全委員会と同じく、危険を指摘することは簡単ですが、安全だとの「太鼓判」を押すことはとてもハードルが高いことが想像されます。
ともかく同意が得られて初めて、「現状変更」の許可申請をし、県景観部局の許可が下りて初めて工事並びに保存・活用が叶います。・・・長く険しいですが、これで歴史的に大事な部分が、既存不適格なまま堂々と活用できるようになるかもしれません。
一方でこの「行程の煩わしさ」の割にメリットが少ないとの意見も有り、あくまでもケースバイケースといえます。ただ、建物の特性に応じた多用な安全性確保の方法を考えていくステップになり、知恵が問われます。
景観指定とそのデメリット2024
歴史的建造物の100%は既存不適格建築物です。最初の建築後何度も増改移築を繰り返している中で、地域の中で遺ってきたものがほとんどです。地域により戦前、その他の地域は昭和25年の建築基準法施行後の建築行為にはすべて「建築コンプライアンス」の網が覆いかぶさります。(ただし既存不適格建築物は正ではありませんが×とはみなしません)
しかし、建築コンプライアンス上真っ白の状態であり続けるにはかなり困難が発生します。結果的に故意でない「違法建築」である歴史的建造物に建基法を司る国交省系の優遇措置=「景観指定」することに批判的な意見が一定量あり、そういう意見は今増加傾向にあります。世間一般のコンプライアンス意識が急上昇しているからです。
コンプライアンス上、真っ白に建築物を是正することは難しく、景観指定期間は指定前に身体検査を実施せざるを得なくなっています。今まで脱法推奨型の文化財系の冠をつけた建物でさえ、耐震や防災上コンプライアンスの網をかけている途上ですので、いたしかたありません。
景観指定されることで発生するデメリットについては、意識過剰にならざるをえない指定機関とじっくりと協議が必須です。ちなみに戸建て住宅でも建築確認の検査済証が当たり前になった時期は昭和後期以降でしょう。
コンプライアンスの海におぼれそうです。
注意
その他市町村指定の景観建造物などは条例に示されていないと3条適用はNGのようです。
指定や指定後の補助に関して、耐震基準や当該建物の法適合性の必要性については、兵庫県(都市政策課景観形成室)にお問い合わせください。コンプライアンス上、諸事情、厳しくなってきています。
景観で考える: 人類学と考古学からのアプローチ>>
2024/1/13
河合洋尚 (編集), 松本雄一 (編集), 山本 睦 (編集)
「景観」で何がわかるのか? 現在の学術的な潮流のなかで、なぜ「景観」という概念が注目されているのか。人工と自然、人間と環境、物質と精神、可視性と不可視性といった二分法的な視点をこえて、人類学・考古学の分野で新たな知見を生みつづけている「景観」論の思考方法とその研究成果を横断的に紹介する。