【相談】
築20年のRC造3階建て住宅です。築後10年過ぎた頃から、3階のキッチン天井に黒斑。天井裏を確認すると天井材(石膏ボード)の上に敷かれた断熱材(ビニル袋詰めグラスウール)の上に水たまりを確認。当初は陸屋根(勾配屋根でなく水平の屋上のこと)からの雨漏りかと思われたので、屋上に散水して漏水箇所を見つける調査もしたのですが、明確な漏水経路が発見できず数年がまんしました。
その後、とある冬期にやはり天井裏を覗いたところ、屋上スラブの下面にびっしり水滴が!断熱材上の水たまりは、結露の水滴が累積してできたものとわかりました。これから迎える夏場に向け本格的な修理(原因撤去)を考えて相談。
【結露とは】
結露とは、暖かい空気(キッチンの湿った暖気)が冷たいもの(屋上スラブのコンクリート)に触れて温度が急に下がり、天井裏の水蒸気(水の気体)が冷やされ水滴(液体)になる現象。よくみられるのが、冬場の窓ガラスに水滴として現れます。
恐いのは、結露により生じた水分やそれにより汚損した建材を通じて、このあと部屋の湿度が上がり、さらに付随して湿った建材にカビやダニの発生、建材の腐食・劣化などの原因になる悪循環に突入し、シックハウスやアレルギーなど健康被害も結びつくことが想像され背筋が凍ります。本来、安心安全快適な住宅において健康を脅かす事象といえます。
結露対策としては、(水滴の原料になる湿度をあげないように)換気・通気・除湿、温度差をつくらない外気(冷気)に対する断熱などが効果的とされます。

【回答】
今のところ雨漏りでなく結露との判断ですが、相談内容でわかる天井裏の湿気・結露からは、時間差で浸水する雨漏りもまだ原因のひとつから取り除けないとは思いますが、屋上コンクリートスラブの下面の結露は明らかなようですので、屋上スラブ上下に断熱材がない、もしくは足りない可能性が大です。
ヒアリングによるとこの3階キッチンの夏場の暑さがひどいそうなので、建築当初の構造的問題=設計上の問題(過酷な部位の断熱不足)に起因するトラブルと思われます。
施工した工務店がすでに廃業とのことで、身近な大工さんに相談されたようですが、本ケースでは、建築時の設計者に相談が大道です。なぜならば同じ設計者の同じような設計事例で同じようなトラブルが起こっている可能性大で、解決策も当然わかっているはずです。
ただ同じ設計仕様でも個別の案件や条件(日当たりや屋上の使い方、屋上直下の部屋の使い方など)によってはトラブルに至らないこともありえます。
その上で、この相談への回答=対処案は、
1.3階天井を剥がして、スラブ下面に直接吹きつけや貼り付けで相当量の断熱材を取り付ける内断熱
2.屋上スラブの上に断熱材を敷いて、その上に防水層を作る後施工の外断熱+防水改修
のふたつが考えられます。

木造住宅のDIY断熱改修の例(天井裏に敷き詰めた袋詰めタイプのグラスウール)
木造住宅の小屋裏には結構なスペースが有り作業性が良いのですが、陸屋根のRC造の小屋裏には人が入れるスペースがないので内断熱が難しく、もしするとしたら天井取壊しする必要がでてきます。
本件の場合、築20年でそろそろ防水層の更新(塗布防水やシート防水)時期(メンテナンスサイクル)なので、屋上の上からの後施工断熱(外断熱)が可能かどうか考えることになると思われます。少なくともスタイロフォーム100㎜は使いましょう。
ただし水蒸気の分子は4/100,000㎜の大きさでコンクリートも通り抜けます。1立米に20度では17.3gまでの水(水蒸気)が存在できますが、0度では4.8gと2/3は結露の水滴になってしまうと言うことだそうです。おまけにキッチンのように湯沸かしや料理で水蒸気が天井裏に伝わっていたら、温度の低下と共に水滴がたくさん発生しておかしくないわけです。これは、湿度がいかに厄介なことかを表わしています。
床下換気のように天井裏に気流を起こしたらどうでしょう。
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