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【相談】
とあるご縁で重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に建つ洋館を購入。あこがれのレトロ屋敷での暮らしをスタートさせます。しかし築100年以上とあってこのまま住むにはちょっと・・・。
そこで相談です。少し大規模な文化財物件、お得にそして快適に暮らせるようにサポートお願いします。
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【答え】
空き家メニュー
まずは、転居前に地元自治体のいろんな補助金を調べます。転入者向けメニューや空き家メニューなどのお得な情報があっても転入してしまうと補助申請が難しくなるものもあるので注意してください(補助金目的で仮住まいされている方もいます)。
文化財メニュー・・・修理補助と磨き上げ
次に文化財等への補助メニューを調べます。国宝・重文への修理補助はやはりがっちり手厚く、工事経費の9割近く期待できますが、重伝建内で特定されている「伝統的建造物」の場合は?
筆者は登録文化財や景観指定の建物補助は経験済みですが、重伝建の建物の補助金業務がないので調べてみました。
まず王道の文化財修理事業の補助・・・重伝建の伝統的建造物○でした。
次に今はやりのインバウンド期待の文化財磨き上げ事業(外観をきれいにする工事)・・・重伝建の指定建物も○でした。
その他メニュー
住宅なら耐震改修補助やエコリフォーム補助は広く使えます。エアコン、給湯器、内窓や断熱材も補助対象です。
もし景観指定もからめば(地域によってですが)定期的な修理や植木管理にも補助があります(毎年少しずつ)。
ただし、文化財系や景観系では大規模な修理や模様替えに際していろいろNG行為(やってはいけない工事)があるので、十分気を付けて計画してください。
また、いずれの美味しい補助情報も最新をゲットし、予算獲得のための前もっての対応窓口へのヒアリングは必ずおこないましょう(できるだけ早く窓口に行く)。地元のヘリテージマネージャーに相談することもきっと一歩前進のきっかけになると思いますよ。
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重伝建の建物に手を加える場合
外観のデザインコードが決まっているので、その枠をわきまえて、ただしい修景をしないといけません。使ってけない材料や色があります。また見えないところだからといってやはり文化財性を損なうような改変はやめましょう。場合によっては取り返しのつかないことになり、後悔することになります。今は自分の所有物ですが今後も長く後世に引き継ぐ義務もまたあるからです。
コンプライアンスと安全
当然ながら人が住む、使う建物に手を加える訳ですから、日本国憲法への遵守は絶対です。地区100年以上ですと如実に既存不適格物件である可能性が高く、実際に人の命に関わる建物の安全性やその他法規を守ることは大事なモラルです。
ただし地区によっては、「伝統的建造物等」は、外観を維持するために現状維持または復元修理する必要がありますが、現在の建築基準法に適合しないものも多く、それらを大規模に修繕する場合には、法の制限を緩和する条例を定めているところもあります。
文化財建造物の保存修理を考える: 木造建築の理念とあり方
2019/4/14
公益財団法人 文化財建造物保存技術協会 (編集, 監修)>>amazon