指定文化財の元茅葺き民家ですが、管理上鉄板葺き修理をしたケース
【相談】
登録文化財の所有者です。代替わりをきっかけに、久しぶりに主屋を見たらあちこち傷んでいてびっくり。久しく本格的に手を入れていないので、どこから手をつけたらいいかわかりません。どうしたらいいでしょうか?
【答え】
最近よく耳にするお悩みですね。
修理工事の考え方
0.安全対策の緊急修理(他家・他人へのご迷惑がないよう)
1.伝統工法による本格復旧
2.現代工法による似た復旧
3.当面の仮工事(一時的と割り切って、本格修理をじっくり考える)
修理総額はいったい?
0.~3.の選択肢のどれをえらべばいいかもわからないケースが多いです。全体把握し、1.による総額、2.による総額がわからないと恐くて0.工事さえ頼めない状況で、ただただ時間が経つケースがなんと多いことでしょう。ましては、出入りの工務店も代替わりし久しく、相談先さえないケースが多いです。
先代もそうやって、その都度適当な工事を積み上げてきたので、一層混沌とした状況に陥っています。
緊急度判定 トリアージュから
まず健康診断、トリアージュをしながら、全体の病状を判断していきながら、概概算で修理総額を示してくれるレベルの工務店に有償でアドバイスをもらうことが1番の近道です。
そんなにかかるのか、1.なら仕方ないが、2.工事でもそんなにかかるのか?と思うことから何事も始まります。修理が必要になった原因を究明して、処方箋を得ないことには治療・薬にいたれません。
その上で0.2.3.見積もして納得してから発注となります。
屋根や普段目にしないような裏の柱の足下まで、ポイントがわかっていれば点検もスムーズです。
今時、土団子(土塊)を積み上げて作る築地塀を作る・修理できる工務店はありません
工事業者の問題
おわかりのように、失われた30年、コロナ禍の3年の間に職人も材料も技術も監督も多くが姿を消しました。正直良心的な工務店が、手を荒らさず着実な仕事を重ねて食べていくのが大変な時代でした。歴史的建造物がまだ沢山残っている地域でさえ、1.の工事ができる協力業者と常日頃に付き合いがあること自体が難しくなっている町場の普通の工務店さんばかりとなっています。
突然、1.工事のできるような職人を使えるか?職人がきてくれるか?という問題もあります。どこも専門職人はひっぱりだこです。
だれがこれから・・・
せっかく残ってきた建物、せっかく登録した文化財、せっかく先代が護った家だから、、、そのプレッシャーは想像を絶するものがあります。今後護ったことにかかる費用があるのに、住む人がいない、住みにくい、といった次の問題も待っています。だれもやさしく声を掛けてくれないこと(行政によるサポートもない)に愕然と立ち尽くす登録所有者、十分所有者が増えています。
さてどうすればいいか、を綴っていきます。