町家の耐震診断(奈良県)

相談

昨年、奈良県の耐震診断(簡易調査)に応募し、診断の評点0.21の判定を受けました。昭和初期の2階建てで一度曳き家をしています。

奈良の古民家町家 伝統構法の耐震診断

診断を受けた当時は、万が一、震災が起こり家が「倒壊したその時はその時」と割り切って、そのままにしていましたが、心境の変化もあり、最近、その対応に取り組んでみたいと思うようになってきました。

素人の考えですが、0.21という事は、多分、建て替えが最良のような気もしますが、年齢や費用、奥まった敷地内での新築にはやはり無理を感じます。ポイントを絞った対応によって、耐震強度が強化される方法もあるのではないかと、期待しているのですがどうでしょうか。

ついては、精密な診断を実施し、今後の方向を決めていきたい思っています。(100%は無理としても)ある程度安心できる耐震工事のプランと見積もり、さらには費用的に可能であれば、施工等について、相談出来る業者さんを探しています。この点に関してアドバイスを頂けないでしょうか?120603

答え

さっそく拝見したところ、基礎が不十分、曳き家をされていることと、昭和初期の2階建てとしては標準的な町家ではありますが、地盤の悪さか、見えない部分の腐朽かが原因で建物の一部に傾きがありました。

6+4.5+6帖の一列型と一間の通り庭で差し鴨居を多用した建物で、本屋普請*です。土葺きの桟瓦葺きで土壁なので「非常に重い」建物であることを条件にするため、耐震性能は低く診断されたようです。

本屋普請*とは、借家用に建てた建物とは違ってしっかりした普請を指します。大和の旧町場の町家には本屋普請と借家普請に大きくわかれますので、その特徴をよく知って耐震対策をしましょう。

階高も低いのですが、木味【きあじ】よく、こじんまりとした建物ですので、効果的な補強で素敵な町家再生が可能かとお見立てさせていただきました。増築部分が「悪さ」をする場合(通気不良で、虫害を引き起こす)もありますので、今後のメンテナンスを考えその部分の「減築」もご検討ください。

なお、奈良県内の古い民家や町家に安心して住み、活用するために伝統的な建物の特性に合わせた「限界耐力計算」による耐震診断と補強提案を致します。

下記自治体の補助事業などと合わせてご検討下さい。

橿原市の耐震補助

橿原市の例では住宅の精密耐震診断にかかる費用の一部を補助しています
対象建物:市内にある一戸建住宅(条件があります)
申請者:対象建物の所有者の方
募集期間:年度初め頃から随時~定数に達るまで
募集件数:10件(平成28年度)
補助金額:診断に要した額の2/3(補助金額上限は66,000円)

★耐震化計画策定(補強設計)への補助は、10万円です。

★耐震化工事への補助は、50万円です。

佐久間順三流SUISUIわかる 木造住宅の耐震診断│耐震補強設計│補強工事の勘所
2017/7/28 佐久間順三 (著)

『木造住宅の耐震診断と耐震補強』を基本に,耐震診断と耐震補強をするための手引書です。実際に診断や補強業務をする場合に,必要な手続きの進め方,現地調査や補強工事について,筆者の微に入り細にわたるノウハウが盛り込まれています。安全な耐震補強の住宅づくりに活用していただきたい手引書。