建築基準法との戦い
増改築や用途変更をスムーズにするために知っておくべきは、建築基準法。
建基法上建築主は新・改・増築など建築行為の工事完了後、検査済証の交付を受ける必要がある。ただし、1999年(H11)年以前でこの検査済証の交付を受けていない建築物は半数以上といわれていて当時はぜひものとの認識無く、無くて支障のあるものでもなかったのが実際。
建設時の適法性?
が、現在では既存の建物がある敷地で増改築や用途変更に伴う確認申請には、「既存建築物の部分が建設時の建築基準法令に適合していることを確認する」のが常識となっている。
「既存不適格建築物」か「違反建築物」か?
その際、既存建築物に「検査済証」がないと「既存不適格建築物」であるのか、「違反建築物」であるのかの判断が難しく、用途変更等を実現できない(確認申請が出せない)ケースが多くあった(自治体毎の判断)。
ガイドライン調査
検査済証の手続き違反だ、自己責任だといわれればいたしかたない、が検査済証がないだけで敷地全体が活用できないではなんとも、、、というわけでの救済策が明文化されたのが2014年。増改築や用途変更の申請、金融機関が融資の可否を判断するに当たり、検査済証のない中古住宅、また建基法ができた1945年以前にすでに建っていた歴史的建造物等が、建設当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が調査するしくみがつくられた。
2014(H26)年に策定された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合技調査のためのガイドライン」で、「法適合性調査」、「遵法性調査Jあるいは「ガイドライン調査」とも呼ばれている。いわゆる「コンプライアンス調査」である。
■既存不適格建築物と違反建築物
新たな基準(法律)の施行時に既に存在する建築物は、新たに施行された基準への適合を除外でき「既存不適格建築物」と呼ばれ存在可能(合法)。建設時の基準に適合しないものは「違反建築物」で罰則がある。
6つのルートで模索(自治体判断)
検査済証のない建物の実態のほとんどは、手続き違反のみならず、どこかしら適法性を欠いているレベルの建物が多く、いままでなんのおとがめもなく使用されていた場合がほとんどであるので問題はやっかいである(一部悪質なケースは違反建築として罰則適用や使用禁止、取壊しなどの行政処分がくだされている)。
検査済証のない建物のある敷地であらら谷建築確認申請を出すためには、少なくとも関西では5ルートあるのが実態。
1.検査済証にない建物を全撤去解体してから建築確認に進むケース(豊中市等)。
2.大連協(大阪府内建築行政連絡協議会)「既存建築物の増築等における法適合性の確認」による建築士か民間検査機関による調査を経て、必要なら適法化のための是正工事をした上で、建築確認申請に進むケース
3.民間の指定確認検査機関でガイドライン調査を受けて、必要なら適法化のための是正工事をした上で、建築確認申請に進むケース
4.完了検査を受けていない建物を増改築、用途変更、大規模の修繕・模様替する場合は、確認を申請する前に12条5項報告(建築物に関する工事の計画若しくは施工状況の報告)を提出
5.既存不適格調書(建築士による、既存不適格建築物について、適切に建築されていることを調査した旨の報告)
6.小規模である場合に自治体の指示で、建築士が簡易調査して、必要なら適法化のための是正工事をした上で、建築確認申請に進むケース
益々混迷を極める建基法。現行法に対処するだけで大変なのに、過去法に遡って建設当時の適法性を調査・判断しなければならないとてもやっかいな事象が今日本の各地で起きている。基礎や地中梁、コンクリート強度まで確認が必要となる躯体調査(破壊調査)に及ぶ事例も多い。大変だぁ。
一部の文化財や景観指定などの歴史的建造物は
建築基準法の規制適用対象とならない既存不適格建築物における「用途変更」の遡及緩和に対応することで、文化的
価値を損なうほどの過度な改修を避けることができる。
歴史的建造物の宿泊施設
近年の旅館業法の改正に伴い、フロント機能を一か所に集約して小規模な複数の客室となる建物を群として運営する「分散型ホテル」の営業形態が許可されるなど、歴史的建造物を最小限の改修に収めながら、運営効率を高めることで、法規制の緩和措置にも準拠した対応が可能となり、収益性も見込めるようになった。