奥飛鳥の限界神社

消滅可能性都市

2019年の一年間に日本の人口は約50万人減少したという。2014年総務省が発表した「消滅可能性都市」は896自治体と。全市町村約1700の内約半数の市町村があぶない。

こうした傾向に抗うIターン誘致など過疎化対策が各地で行われている一方、「静かに消滅を迎える」方向に舵を切る自治体が増えているという(200827朝日新聞「限界先進国」より)。

現在1.2億人の日本の人口は、2050年、あと30年もしたら一億を切り、100年後の2020年には5千万人になるそうだ。「地方創生」とはなんだろうか。

200713栢森 崩壊する鎮守の杜

飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社

吉野に抜ける芋峠を目指し飛鳥川の上流に向かうと、川の上空にしめ縄がかかり、異界の入口を感じさせる。昔と違ってすっかり整備された道路際の石積みの上に社務所が迎えてくれる。急な石段を登ると霧雨にぼうっと浮かび上がる社、飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社【あすか かわかみにいます うすたきひめのみこと じんじゃ】に参拝させていただく。所在地:明日香村稲渕698

200713飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社 拝殿

多分昭和初期に整備されたと見える几帳面な造りの拝殿とその奥には玉垣には菱格子が端正。しかし朽ちている。荒れている。さびしいことだが手が入れられないまま土に帰ろうとしている。石は土に埋まろうとし、草木は建物に襲いかかる。鎮守の杜の終わりが見える限界集落ならぬ、限界神社である。終わりはまた始まり、きっと永遠神社となろう。

手を合せ、山の神に祈るだけ。栢森に向かう。

200713明日香村栢森集落

栢森集落

栢森集落は、飲食店や民宿が開業していて、急峻になりつつある飛鳥川沿いに民家が適度に集って生活が営まれていることがわかる。数件の空家もあるが、美しい集落を楽しませていただいた半日、いろんなことを考えた。

200713明日香村栢森集落と飛鳥川

飛鳥川上流域にある「飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社」は、日本で一番長い名前の神社として有名だ。本殿がなく、拝殿後方の南淵山をご神体とする原始神道の神社で、200段ほどの石段が境内への入口となっている。
皇極女帝(のちの斉明女帝)の雨乞いが、農耕の踊り「南無天踊り(なもでおどり)」としていまに伝わっているのがこの神社だ。現在の南無天踊りは、神社の絵馬と古老の記憶により復元されたものだ。雨乞いの様子から大雨に感謝し乱舞する様子まで、ストーリー性のある構成と独特のお囃子が面白い。(奥飛鳥の文化的景観  重要文化的景観)>>

観光亡国論 (中公新書ラクレ) Kindle版

アレックス・カー (著), 清野由美 (著)

右肩上がりで増加する訪日外国人観光客。京都、富士山をはじめとする観光地へキャパシティを越えた観光客が殺到し、交通や景観、住環境などでトラブルが続発する状況を前に、東洋文化研究家アレックス・カー氏は「かつての工業公害と同じだ」と警鐘を鳴らす。本書はその危機感を起点に世界の事例を盛り込み、ジャーナリスト・清野由美氏とともに建設的な解決策を検討する一冊。真の観光立国を果たすべく、目の前の「観光公害」を克服せよ!Amazon