’95震災後の小屋裏補強 伝統和風 雲筋違とワイヤー
近代和風の耐震補強
’95震災後傾いた建物を建て起こした後、小屋裏を補強したケースです。大きくねじれながら海側に傾いたためまずは全体が垂直になるように突っ張り棒とワイヤーを使うことからはじめたそうです。
次に大架構の不安定な小屋裏を安定させるために太いワイヤーで各所を結びつけた上、細かく雲筋違を入れたケースです。屋根も軽くするため葺き土を使わない桟瓦に吹き替えました。
軸部(柱)の負担する荷重として大屋根の重さは今も心配ですが、建物中心部に壁があるため、東部である大屋根の水平構面がいくらか強化したといえるかもしれません。
「関西は地震が少ない」神話
大正末期から昭和初期にかけてこうした豪奢で大型の近代和風建築が建てられましたが、大正12年の関東大震災の教訓が必ずしも関西には生きていないケースも多くみられたようです。「関西は地震が少ない」神話が根強く、関東の災禍は、当時の棟梁にはうまく伝わらなかったのかも知れません。
そのため、地震の揺れ方によってはひとたまりもない構造のものが多く、’95震災での大量の倒壊に至りました。本来高級な普請ほどそれらを支える構造(みえない部分)への仕事が大棟梁の腕の見せ所ではないかと思うのですが、そこは今も昔も-コストと仕事-のバランスをとるのがむずかしかったのかも知れません。>>「耐震木造技術の近現代史」
この建物の耐震上の弱点は、
- 数寄屋普請で柱が細い
- 大空間で柱間が大きく、柱数が少ない
- 上記、特に南側に柱も壁も少なくバランスが悪かった
- 土台とアンカーボルトは使っていたが、レンガ基礎であった
- 背が高い
- 建設当初は土葺き、棟高の瓦葺きであった、しかも込み入った入母屋
- 下屋は垂木だけで身舎につながっていた
- 小屋裏の雲筋違が、火打ち梁、火打ち土台がなかった、もちろん土壁に筋違はなかった
- 雨漏り痕がいくつかあった
とこんな感じです。
近代和風の耐震補強
格子壁による近代和風の耐震補強の例
玉石基礎の補強 足固めの緊結