焼杉板・桧節板と石積み(左:大和八木・多様な花崗岩、右:醍醐町は飛鳥石か)
焼杉板・桧節板の足下には石積みをみることができます。地場の木材と地域岩の組成がそこにはあらわれています。
大和八木の町家に使われている贅沢なものは桧節板です。既製品が跋扈する現在ではこうした厚さがあって幅広の板にお目にかかることは希で、修理の時に困ります。
木目の粗さや節の出具合でその家の格式もわかります。
上の写真は某寺のもので。黒みがかった花崗岩を中心に灰色勝ちのもの、さび入りのものが混ざります。軽くたたきわった荒々しい石積みですが、おそらく江戸時代には建っていた建物かもしれません。
左の石積みのほとんどが「飛鳥石」とよばれるごま塩の入った黒い花崗岩、右はやはりさび石混じりで切石、表面は「びしゃん」でたたいて平面を作り出しています。母屋の足下ですので、きちっとしています。
皆折釘【かいおれくぎ】
焼杉板・桧節板は下地の横桟に皆折釘を使ってとめます。「かいおれくぎ」と読み、断面が四角の角釘を鍛造で釘頭を折り曲げたもので、和釘のひとつです。半永久的に保つ釘です。板の張り替えに際してももちろん再利用します。錆でコーティングされて鈍く黒光りする姿はとてもきれいです。(皆折釘:皆折の字のごとく、角釘をまるごとで「釘頭」を作り出しているので、釘頭を平らに打って巻き込んだ巻頭釘や、扁平な断面の平折釘より丈夫です)
さて皆折釘の鎌首は上向きか下向きか?焼杉は徐々に傷んできます。すると釘穴も徐々に大きくなってきます。そんなとき鎌首に少しでも引っかかれば、板が浮く心配がありませんね、というわけで板を受けるように釘を打つの「|__ 」が正解ではないでしょうか。
以下の写真でわかりにくいですが、7分はあろうかといった厚板を皆折釘で止めた例です。合じゃくりのぶ厚い乱巾板を向こうから手前に留めています。よって皆折の開先が向こうを向いています。きれいにみんな横向きに打たれた例です(奈良県橿原市十市の土蔵の腰板)。
図解 誰でもできる石積み入門– 2018/12/19 真田純子 (著)
景色の中の石積みを既得権(あってあたりまえ)のように思っていてはいけない。城郭や大規模な石積みには、職人集団による高度なものあるが、市井の石積みは集落での共同作業によるものが多い。よって壊れたら修理が必要で、また新たに石積みを作ることも可能である。材料の石と「栗石」、詰め込む土と若干の専用道具は必要だが見ての通り、人が抱えられるおおきさの石を使えば自ら積むことができるのである。
これを契機に危なそうな石積みに注意を払い、人工物には手入れが必要なことを肝に銘じましょう。
登録文化財 焼杉塀の修理>>http://www.kazabito.com/2038
焼杉板の補修>>http://www.kazabito.com/1452