旧西本組本社ビル
昭和2(1927)、鉄筋コンクリート造3階建、2000年登録。腰を花崗岩張、2、3階をタイル張とし、玄関部にはペディメントをイオニア式柱で支えたポーティコがとりつく。立面のデザインと細部の装飾はよく均整がとれ、建設会社旧本社ビルとしての風格をもつ。設計は早大出身で西本組に勤めた岩井信一。
【相談】うちの建物を登録文化財にできないか?
所有者さんからうちの建物を登録文化財にできないか?との相談がありました。登録文化財は知っていますが実際に申請したことがありません。どうやって進めたらいいでしょうか?
【答え】登録調査は次へのステップ
今時の登録事情からいうと、登録は狭き門になったといえるでしょう。かつては簡単な図面とA4一枚の所見でさらっと登録になりましたが、最近の登録人気で必要書類が多くなり、しかも厳密なマニュアルに則ったものが求められます。また文化庁登録文化財の調査官の実査が条件になるので、よほど既調査・既評価な建物でないと申請受付すらしてもらえません。
当世どこもマンパワーが足りていないようです。そもそも文化庁にも都道府県や市町村の文化財課にも、建造物に詳しい専門家が少ないのも原因です。47都道府県ありますので、毎週実査に尋ねても年一回で精一杯。規模の小さい県では二三年に一回の実査を待たねばなりません。
まず実査の予約を入れておくことからスタートしてください。
・・・文化庁調査官の実査がなくなります。地元で判断に時代に(2024.10.21文化庁)。少しフレキシブルになるかも知れません。
次に検証。現地調査をして、その地域を歩き品定めをしましょう。日頃意識的に文化財を見ていれば自ずと登録候補としての価値は見定まります。わからなければ、ヘリマネ友達と複眼で見ましょう。ときにはそのジャンルのスペシャリストを探してみていただくこともいいかもしれません。
当然きちんとした市町村の文化財課なら登録制度の説明と現調(現地調査)のため足を運んでくれます。
こうして登録候補としての評価に概ねOKがでたら、所有者さんに登録申請の手続きとどれくらいの作業が必要か説明しましょう。設計事務所の契約行為と同じく費用負担に納得して契約しましょう。ここで注意することは、登録の可否判断はあくまで文化庁です。登録だけを目的にせず、登録手続きを通して今後の維持・活用に資する成果品をお渡しできるように心がけましょう。
例えば、登録に必要な現調と図面を作成しながら、修理が必要な箇所を確認します。使い勝手の悪い部分や、リフォームが必要かどうかも所有者らへのヒアリングをする中で見えてきます。記録・提案は調査記録として残しましょう。また今までの改修の痕跡を調査して建物の履歴を作りましょう。所見にも改修歴は必要になりますので。
所見作成の過程を通して、修理や活用に際して長い歴史を後世に残せることが登録調査の勘所です。こうして遺っている建物とまつわる地域・人物・歴史について今わかることすべて残すという心構えが必要です。
結果登録できなくとも何らかの成果を残すことがヘリマネのミッションです。登録不可の場合もありますので。
古地図で楽しむ神戸
2019/12/23 大国 正美 (著)
さまざまな古地図や絵図の読み解きで神戸の近世-近代を明らかにする。文字情報だけではわからない街道や自然景観の変遷、港町の情景、近代文学者たちのまなざしが地域の歴史や歴史的な建造物のなぞを解いてくれます。他の地域でも同じような「古地図本」を広げてみましょう。
近代建築の投影 歴史的建造物の光と影
– 2022/4/4
歴史を背負う建築空間がどうしたら甦るのか。
本書は、失われる記憶の再生術伝授である。(都市形成史家 岡本哲志)
NHKブラタモリ最大出演回数を誇る岡本哲志先生推薦!各地の明治・大正・昭和初期における歴史的建造物保存の状況を調査し。
その際に、知り得た建造物に隠された歴史や物語を紹介しています。幕末から戦後へ、100年の歴史をたどる
開国とともに現れた居留地の西洋館に始まり、明治期における和洋折衷の試行錯誤、お雇い外国人による本格建築の導入、そして関東大震災を乗り越えモダニズム隆盛を迎える日本の住まい。住宅史研究の第一人者が、幕末から戦後に至る日本住宅100年の歴史を、間取りやライフスタイルの変遷にも着目しつつ、時代の流れに沿ってやさしく語り下ろす。本書で紹介するのはいずれも現存する建物で、その見どころを写真も交えながら解説する。足掛け3年・150回続いた『週刊新潮』好評連載を再構成してまとめた、近代建築ファン必携の一冊。カラー口絵を含む写真126点収録。by amazon