修理前には地元(特に都道府県)の文化財課にまずは相談しましょう。
これぐらいならいいだろうと思っていてはいけません。登録文化財制度の歴史は1996年に始まり2024年現在で1.4万棟。それらの修理について熟知する行政マンはほんのわずかです。修理の相談に対しても担当者によって経験や見立てが違いますし、建造物の専門でないと対応が難しいと思われます。修理に際し、どういった場合に国への「届出」の必要かもあまり明確ではありません。
文化庁の補助要項にある登録文化財への補助メニューは、
の2つで個人所有者にもOKです。詳しくは>>登録文化財の手引き3 補助事業の申請(文化庁)
- は、設計監理料のみが補助対象(50%補助)
- は、外観及び公開範囲の仕上げのみが補助対象(50%~補助)
通常の修理目的なら、2.が現実的です。
図面や写真を用意して、どの部分をどうしたいかを考えた時点で都道府県文化財課と相談するのがいいでしょう。
(追記:2018年地震や台風被害が続く日本列島です。文化財しかも登録文化財への予算割は厳しいものがあります。被災者支援や、より重要な文化財の修理に予算は組まれます。インバウンド・観光収入期待に登録文化財の観光活用が見直されやや予算が増えたかのように見えましたが、2019年度以降、観光効果の見えない個人住宅系はこの補助金はほぼ無理です。また設計監理費補助も文建協などの指定文化財に携わる技術集団の専門家から指導を受けるのが条件ですので、指定級でかつ大規模、そして予算の潤沢な登録文化財の修理活用工事の際にやっとこの1/2補助が生きてくるようです。登録文化財のほとんどは「自力再生」あるのみです。200225)
文化財建造物の保存修理を考える: 木造建築の理念とあり方(文化財建造物保存技術協会編集)
磨き上げ事業の年間スケジュールは、
- 毎年6-8月 概算要求(都道府県とりまとめ)
- 毎年11月 予算要望(都道府県とりまとめ)
- 毎年1月 事業ヒアリング(都道府県対応)
- 毎年 1月、4月、9月、12月 補助申請(事業者)
- 毎年4月、6月、11月、2月 交付決定(国)
それぞれの節目を経て、交付決定通知後、事業実施(入札→契約→着工)となります。まずは工事内容、事業費算出(工事費見積)の必要があります。保存修理にするか美装化にするかによってそれぞれ書式が違いますのでよく考えて決めましょう。通常は単年度に修理を終えることになりますが、複数年にわたる修理工事も可能です。
具体的なスケジュール
- 所有者・管理者との打合せ
- 補助金事前調査
- 現状確認
- 進め方計画などヘリマネ費用提示
- これぐらいのときに国の「美装化費用」(夏締めで翌年度工事が最短)、自治体の「住宅なら耐震補助や空き家補助など」補助金(年末頃締切りで単年度締め)の検討(工程に大きく関わるため)
- 現地調査、必要に応じて実測・作図
- 概算
- 具体的な修理計画と費用確定
- 施工者選定
- 補助金用書類・図面作成
- 入札
- 着工
文化財建造物保存修理作業の流れ(文建協)>>
ヘリテージマネージャーの業務としては、
調査申請をした場合は、すでに評価、図面などがあると思われますので、
- 現地調査・・・修理が必要な部分の調査
- 問題点の整理、業種別など
- 緊急度の判断 トリアージュ能力が必要です
- 概算を提示しながら修理方針の共有
- 図化、書類化、見積書作成(文化庁様式による)
- 保存修理に加え活用方針や観光的な費用対効果の具体性、またはそのフィジビリティが必至です。ヘリマネ以外の経営ブレーン・事業体が必要となります。
以上のようなことは、親切な文化財課(建造物係)ならどなたでも教えてくれますので、ぜひ足を運びましょう。
抜本的な文化財との取り組みを考えねばなりません。
登録文化財だけど本格修理が難しいケースの相談事例>>