コロナ廃業 登録文化財「登録抹消」の増加

>>登録文化財と活用 サイトマップ

アフターコロナのマーケティング 混迷の時代を切り開く、新しい消費の動き

(1)アフターコロナにおいてマーケティング戦略が
どのような経営環境によって変化していくのか
(2)その中でどのようなマーケティングの潮流があるのか
(3)具体的にどのようなポイントを押さえてマーケティング戦略を立案し、
それを実行していくのかについて、さまざまなデータや企業のマーケティング事例をもとに解説をしていく。

 

大阪の銭湯「源ケ橋温泉」が廃業

施設老朽化+コロナで(2020.6.29デジタル毎日)
源ケ橋温泉:文化福祉、昭和10頃築、木造2階建瓦葺、建築面積343㎡、1998登録(国土の歴史的景観に寄与しているもの)
解説文:平面は番台を挟んで男女別に区画され、浴槽部分は随時改修されているが、脱衣場及び浴室の構えはよく残る。外観は、屋根は茶褐色の桟瓦を葺き、正面2階には彫像付きの洋風窓や丸窓を開く。市街地における木造の公衆浴場の好例で、広く利用されている。

長崎、「江崎べっ甲店」閉店

職人の後継者不在や原料の入手困難などで300年の歴史に幕(2020.6.30東京新聞 東京デジタル・47NEWS)
江崎べっ甲店:産業3次、明治31年築、木造2階建瓦葺、建築面積403㎡、1998登録(造形の規範となっているもの)
解説文:鼈甲細工の製造・販売を手がけた老舗。正面を店舗、後方を工場・事務室等にあてる。店舗外観は、東が町家風、西が土蔵風で、軒廻り・窓廻り等の要所を洋風とする。内部は全体を洋風につくる。洋風建築が多い市内にあって、明治後期の店舗建築の好例である。

玉川旅館、コロナ廃業で解体・登録抹消か

大正10年創業、太宰治ゆかりの「玉川旅館」新型コロナの影響で廃業→取り壊し→登録抹消か(千葉県船橋市湊町・2008年登録、 2020.5.19報道)・・・維持費だけでも大変なはず。登録プレートによると「登録文化財=国民の財産」のはずなので守るのは国民、せめて取り壊しを猶予できないものだろうか?

  • 玉川旅館本館(S16)建築面積65㎡
  • 第一別館(S3+S23)建築面積230㎡
  • 第二別館(S8)建築面積362㎡

本館解説文:敷地の南西隅に建つ。L字型に棟を設け、北と東面に入母屋破風を見せる。1、2階とも南から東面にかけて、出桁造の庇をまわし、跳高欄付の縁をつける。南寄りは地盤面が低く、柱を長く延ばし、懸造状に造る。楼閣風の外観にまとめた料亭座敷である。【造形の規範となっているもの】

悲しい、登録抹消

120720国の文化審議会は、「日本カトリック教会谷津巡回教会」(静岡市葵区谷津)の火災・焼失により、また東日本大震災で損壊した東北の登録有形文化財の建造物5件について、文化財登録抹消を120720答申、残念。(平成24年12月13日抹消)

130624東日本大震災で被災した登録有形文化財15件が登録から除外が決定。除外を免れ復興に手を尽くしている文化財も地域と共にあることを知り厳粛な気分になりました。岩手、宮城、福島、茨城、栃木の建造物で、「滅却」、「除却」がものがなしく、合掌。(茨城大学五浦美術文化研究所六角堂、越前高田 酔仙酒造、石巻旧北上町役場など含め、平成24年2月7日抹消)

131111続報!
東日本大震災の津波で流失した北茨城市の茨城大学五浦美術文化研究所六角堂(六角堂)の再建がスタート。美術家・思想家の岡倉天心創建した1905年の姿に復元予定。

ただし、復元は「新築」扱いで、登録からの抹消は有効のまま。うれし、かなしや。でも、せめて惜しむ気持ちで形が復元されることでその意義は偉大。

登録有形文化財(建造物)の抹消の条件

1.重要文化財に指定された場合
2.都道府県や市町村の文化財に指定された場合
3.焼失や解体などの現状変更が行われた場合(室谷家解体・抹消は有名)

登録有形文化財(建造物)の登録抹消について>>
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/

131020川崎重工業神戸工場第一ドック登録抹消

川崎重工業神戸工場第一ドックは埋め戻され、登録文化財抹消となるそうです。明治35年(1902)1998年土木構造物・再現することが容易でないものとして登録文化財になっていた。(平成28年9月14日抹消)

登録抹消 川崎重工業神戸工場第一ドック 空のドック
川崎重工業神戸工場第一ドック埋め戻しへ

解説:神戸港における最初の本格的石造ドライドック。渠長130m(現在は161mに延長)、渠幅24m、渠深8.5mの諸元を有す。設計及び工事長は山崎鉉次郎で、海軍ドックの系譜に連なる。難工事で同時期同規模ドックの倍以上の工期を要したことで知られている。

131129登録文化財の旅籠が消失・・・大丸屋大脇家

岐阜県中津川市、馬籠宿近く「大丸屋大脇家住宅主屋」(2012登録)です。全国でも旅籠建築は珍しく、とても残念です。木造伝統家屋の一番の敵はこの火災。文化財の防災計画はとても大事で文化庁も力をいれて、火災報知器や初期消火を促すように注意を向けています。(平成27年4月16日150416抹消)
焼失等による登録抹消>>http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/shoshitsu.html

大丸屋大脇家住宅主屋は、明治20年頃築(昭和後期改修)の木造2階建、切妻造桟瓦葺、建築面積174㎡。旧中山道に東面して建ち、1階の北側にミセや座敷を配し、トオリニワの南側にはかつてウマヤを設けていた。2階は客座敷などを配置する。ミセ前面に出格子を建てるなど旧中山道の旅籠形式を伝える。

中山道の険しい峠のある馬籠周辺では、民間の重要な輸送手段である牛方・馬方を生業とする峠集落が形成され、そのなかで大脇家は「馬方のための旅籠」を営んでいた。

細久手宿大黒屋(登録文化財)
これは、岐阜県細久手宿大黒屋(登録文化財)

150126旧伊勢屋質店解体、登録抹消

 「たけくらべ」などの作品で知られる女性作家樋口一葉(1872-96)が通ったとされる東京都文京区本郷の「旧伊勢屋質店」解体の危機。登録抹消か所有者移転か?141218→区が「一葉募金」を呼びかけている。

150416泉勇之介商店登録抹消

灘五郷唯一の木造酒蔵などががついに解体され登録抹消に。150416付抹消。
解体等による登録抹消>>http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/kaitai.html

日本真珠会館(S27)、所有する日本真珠輸出組合が建て替えを決め解体必至。当然登録抹消か。・・・2017年4月時点でまだ抹消されていません。

震災で倒壊→再建で「重文」維持 旧神戸居留地十五番館

旧神戸居留地十五番館 再建後の姿 1880年頃築
旧神戸居留地十五番館 再建後の姿 1880年頃築

旧神戸居留地十五番館のように、文化財は震災ですっかり倒壊しても、材料が元のものであれば文化財として復活できますが(旧神戸居留地十五番館は、’95阪神淡路大震災で倒壊後再建した重文)、火災や津波などでもとの材料がない場合は、文化財としての再生は不可能で、レプリカ保存となるといわれています。

登録抹消理由

登録抹消理由で認められるものはこれだけみたいです。「等」ってなんでしょう。しかも文化審議会への諮問・答申や官報告示などの手続きを経る必要があります(年三回とか)。
・ 重要文化財指定による登録抹消
・ 都道府県指定による登録抹消
・ 市町村指定による登録抹消
・ 焼失等による登録抹消
・ 解体等による登録抹消

登録抹消できないケース

所有者移転やそのまま建っているのに所有者の都合で抹消するのはできないそうです。「登録」にそんなに厳密になるのはなぜなのでしょうか?手続きが大変なのは想像がつきますが、、、。

登録文化財の条件は、「登録文化財の条件」で現した通りですが、ここでもっと大事な条件をあげます。この登録文化財制度は伝統ある建物の登録を通じて「保存」→「活用」→「地域への貢献」を目指しています。単なる相続税対策や広告塔替わりなど実利を目的に「登録」するのは筋違い。091120

最近、登録物件が登録後間もないのにかかわらず「登録抹消」物件が増加しており、登録者のモラルが問われています。お陰で、登録申請が難しく、登録したい方には狭き門となってきています。

また、登録文化財へのフォロー、相談業務は制度としては皆無、自治体や、我々ヘリテージマネージャーなどの誠意にかかっています。きちんとフォローできない制度、にならないことを望みます。

もちろん、やむ得ない状況下で登録を抹消するケース、たとえば、

  • 維持できなくなって取り壊すケース
  • 大きく外観に手を加えざるを得ないため登録要件からはずれてしまったケース

とこの世の中、登録文化財にまつわる諸条件の激変はしかたのないこと。これは「登録」時にすでに末期症状があり、最後の望みを「登録文化財制度」に賭けた!ということを物語っているとも考えられる悲しいケースです。

安易な登録理由に警鐘か

しかし、「登録文化財」の権威やメリットが一人歩きして、単に相続税軽減狙いや物件価値を上げることだけを目的に、保存・活用の意志も財力もないのに登録するケースもなくはないよう。登録文化財制度の根幹を揺るがすこと、登録制度の悪用と言われてもしかたがありません。制度を利用して利益確保したあと(相続税軽減)、自己都合でぽいっと「登録抹消」するとは言語道断、「国民的財産です」と記した登録プレートが泣いています。

「文化財登録申請」には必ずプロが傍らにいて行われているはずです。プロは申請業務が最優先でなく、地域の文化遺産を守り育てる熱意を持って、地道にできる何かをもう一度考えてみてはいかがでしょう。

またここで一方、「見えてくるモノ」は、登録文化財になったものの、ほとんどメリットがないため空しく「登録プレート」を見ている所有者さんの姿。

この屋根、この外壁・・・、すっかり痛んでしまっているけど、こんなにお金がかかるんでは、とても維持できないよ~・・・、との悲鳴が聞こえてきます。

登録文化財を、一部のお金持ちの贅沢品にしてしまったのでは、これからもどんどん登録抹消が続出してくることでしょう。

岸和田市立自泉会館 登録プレート

岸和田市自泉会館とその登録プレート
このプレートは喜んでいるかしら・・・。

ちなみに、登録抹消のときは登録プレートはどうなるのでしょうか?