奈良で古町家買いました

奈良の古町家再生の相談

地元に空き家が出たので気に入って買いました。江戸期まで遡るかもとのことでした。天井は低いですが、間口が広く、古材の柱・梁のかもす雰囲気は新築では味わえないものと思い、購入に至りました。

過去の町の歴史資料にも何度か職業を変えながら古くからそこで商売をしていたようです。町並みが残りますが、伝建地区でもなく建物の保存に行政からの支援は何もありません。最近は建物が壊されると今時の建物にどんどん変わっていきます。かつてのにぎわいをなくした街道筋の古い町ですが、長年住んできたものには愛着があります。

まず耐震性の不安があります。来たる直近の大地震への備えと、長い目で活用の想いが募ったらこの建物にとって「いい姿」を取り戻したい(修理・補強・美装・設備整備など)と考えます。

建物の見立て、修理・補強の可能性について、現地を見てもらってのアドバイスをお願いします。

 

答え 資料調査~丹念な修理を

軒の低いツシ2階で、2階奥に展望のよい座敷がしつらえられた少なくとも、明治までは遡るだろう古民家です。側柱が母屋まで延びる形式で、1階階高は2.6mと低く、幅広の土間に1間半二列の座敷が前後に三部屋続きます。2階は土間上に「木置き」と小規模な「火袋」を備え、低い竿縁天井を張り巡らせた「全面座敷」を持つ商家らしい2階です。細長い敷地に軒を連ねて建てられた町家ですが、京町家より間口がゆったりしているのが奈良町家の特徴でしょうか。

050521京町家準棟纂冪 火袋の架構

かつての商家としての成り立ちを調べると、こうした間取りの意味がわかるかもしれません。桧柱に松の梁、大黒柱も桧です。欄間には「梅鉢と扇」と「近江八景」と定番の透かし彫りが見られ、大和天井には角材の梁が見えます。辺りに残るほかの町家の格子同様淡泊&シンプルで、京都より少し太く、間も違います。間取りに食い違いがあることからも商家民家として変化が見られた時代のものと思われます。街道筋でいろんな人々や「文化経済がいきかった場」ならではの風情を感じられる格子越しの風景は奈良県にとって貴重な存在かも知れません。

 

120809京町家 坪庭と座敷

補強や修理に多くの課題がありますが、まずは朽ちた部分の取り替えなどゼロ回復から初めて、今よりもっとその空間がよくなるような環境整備ができて、かつ貴重な歴史的な建造物として後世にその姿を残すことができたらいいですね。

190521大和上ツ道沿いの町家の玄関

白竹を使った駒寄せは独特の軽さがあります。奈良には多く見られます

 

その後、拝見した町家が、S45の調査書「奈良県文化財調査報告」第13集 民家緊急調査報告」で調査されたものだとわかりました。数少ない江戸期の町家、しかも古さと新しさが混在した興味深い町家だとわかりました。昭和中期までの民家調査がうんと遠い昔の出来事になったのだと痛感した出来事です。

下記本は、町家調査にはとても役立つ参考書。図書館で見てください。

近世近代町家建築史論 – 2005/1/1
大場 修 (著)

目次
序論 本書と目的と構成
第2部 在地型町家の形成
第3部 在方集落における町家形成
第4部 座敷の摂取と二階の形成
第5部 町家形成の規定要因
第6部 ファサードの類型と変容
第7部 町構成と町家の存在形態
第8部 京都型町家と在地型町家
第9部 町家の近代